冒険者たちは皆冒険用の装備でバッチリと決めていた。それぞれよろいやローブをまとい、派手な剣や杖を装備し、中にはデカい盾を背負っている者もいる。まさに絵に描いたようなファンタジーの世界だった。

「おぉ……」
 俺が圧倒されてキョロキョロしていると、
「あっ! 串焼き食べるです!」
 エステルが俺の手を引いて屋台に連れて行く。
「はい、いらっしゃい!」
 おじさんはにこやかに応対してくれる。
「俺、魔石しか持ってないよ」
 と、エステルに言うと、
「魔石でも大丈夫ですよ!」
 と、おじさんが答える。
「え? そうなんですか?」
 俺はゴブリンの緑の魔石を出すと、
「それなら二本だね」
 と、言って俺とエステルに一本ずつ肉の刺さった串を渡してくれた。
 炭焼きで香ばしい香りが立ち上る串。俺は一口食べてみる。
 少し硬いが、噛むと肉汁がジュワッと湧き出してきて、それがタレの甘みと合わさり、素敵なハーモニーを奏でる。

「うはっ! これは美味い」
 俺は思わず声に出してしまう。
「ありがとうございます!」
 おじさんもうれしそうに言う。
「ここの屋台は評判なんですぅ」
 エステルは口の周りをタレだらけにしながら、ドヤ顔で言った。









1-16. 真紅に輝く魔石

 串焼きを食べながら歩いていると立派な石造りの城壁が見えてきた。あれがエステルの暮らす街らしい。
「俺が『稀人かもしれない』っていうのは内緒にしておいて欲しいんだよね」
 串焼きの最後の肉をかじりながらエステルに言った。
「え? なんでです?」
「だって、稀人だったら徴兵されて国の防衛に回されちゃったりするんだろ?」
「うーん、まぁ、王様に謁見(えっけん)はしないといけないですね」
「ほらほら、俺そういうの嫌なんだよね」
「え――――! でも、ソータ様にはこの世界を(まも)っていただかないと……」
「徴兵されちゃったらもうエステルとは会えないと思うよ」
「えっ!?」
 急に立ち止まって目を真ん丸にするエステル。
「だってそうだろ? エステルはただの冒険者なんだから、軍隊には入れてもらえないよ」
「そ、そうでした……」
 しょげるエステル。
「だから、稀人の事は内緒な」
「でも……。世界を救わないと……」
「そんなの二人で救えばいいよ」
 俺はそう言ってニッコリと笑った。