俺はうれしくなった。Aランクの魔物なのだ、きっと金貨十枚くらい……六十万円近い収入になるに違いない。俺は小さくガッツポーズをした。










1-15. 魅惑のヘッドハント

「あ、そうだ! どうやって帰るか分かりますか?」
 俺はクラウディアに聞く。
「え? あなた達、地図も持ってないの?」
 驚くクラウディア。
「落とし穴を落ちてきたので……」
(あき)れた……。ここは60階のボス部屋。そこのドアを開けると地上へのポータルがあるはずよ」
 そう言ってクラウディアは壁面にあるドアを指さした。
「ありがとうございます。それでは……」
 俺はそう言って、帰ろうとした。

「ちょっと待って……」
 クラウディアは立ち上がると俺の手を取り、両手で包んで言った。
「え?」
「あの()より私の方が役に立つわよ……。どう? 組まない?」
 クラウディアは上目遣いで俺の目をジッと見て、ニッコリと笑った。戦闘の汚れが見えるが、すべすべとした肌に整った目鼻立ち、相当な美人である。
「い、いや、ちょっと……そのぅ……」
 俺が困惑していると、
 クラウディアは俺の手を胸に押し当てる。豊満な胸は温かくてマシュマロのように柔らかく俺の心臓はドクドクと高鳴る。
「ソ、ソータ様……?」
 エステルが戻ってきて驚き、寂しそうな目で俺を見る。
「あー、いや、これは……」
 俺が言葉に(きゅう)していると、クラウディアはニヤッと笑い、
「どっちがいいか……、よく考えてみてね。また後で!」
 そう言って俺にウインクをすると、仲間の方へと歩いて行った。

 エステルは俺の手をそっと両手で取り、寂しそうにうつむいた。
「大丈夫だよ、エステルを見捨てるような事しないから」
 俺はそう言ってエステルの頭をポンポンと叩く。
「ほ、本当です……?」
 エステルは今にも泣きそうな目で言った。
 俺はニッコリとうなずく。
「良かったですぅ」
 エステルは胸をなでおろし、安堵(あんど)した表情を見せた。

       ◇

 ドアの向こうにあった、白く光りながらクルクル回るポータルに触れると、身体がふわっと浮いて景色が変わった。そこは洞窟の入り口だった。夕暮れ間近な傾いた日差しの中で、多くの屋台が出て、冒険者でにぎわっている。