「エステル!? ひよっこどもは邪魔邪魔! あっち行ってな!」
 と、乱暴に言った。
 確かに俺の装備は防刃ベストに物干しざお。どう見ても頼りない。役立たずに思われたのは心外だが……、仕方ないだろう。
 俺はエステルと目を見合わせ、肩をすくめながら少し下がった。

 ワイバーンは下から見ると思った以上にデカく、攻撃もすさまじい。見上げるような高さから長い首をブンブンと振り回し、頭に生えている長い角をものすごい勢いでぶち当ててくる。その度に、ガーン! という激しい腹に響く衝撃音が上がっていた。俺が直撃を受けたら間違いなく即死である。これが魔物との戦闘の現実なのだ。思わずゴクリとツバを飲んだ。

 戦闘を見ていると、盾役がワイバーンの攻撃を一手に受けながら、剣士と魔術師が死角から攻撃を加えていくスタイルのようだった。しかし、頭が二つあるためどうしても一方の頭の攻撃を抑えきれないようだ。

「ジャック! またターゲット外れてるわよ!」
 クラウディアが盾役に叫ぶ!
 その直後だった、ワイバーンが巨大な尻尾をいきなりブンっと振り回し、剣士と盾役が吹き飛ばされた。
「ああっ!」「キャ――――!」
 前衛崩壊である。
 ワイバーンはズーンズーンと地響き鳴らしながらクラウディア達に迫った。

「ホーリーシールド!」
 クラウディアは光り輝く魔法の防御壁を展開する。しかし、ワイバーンの力は強大だ。ガーン! ガーン! とシールドにデカい角をぶち当て、今にも崩壊しそうであった。

「キャ――――!」
 クラウディアにしがみついた魔術師が悲鳴を上げる。
「ちょっとアウラ! しっかりして!」
 クラウディアは必死になってシールドを支えながら叫ぶ。しかし、劣勢は明らかだった。

 さすがにこれは出番だろう。俺はリュックから最強の殺虫剤『ハチ・アブ・マグナムZ』を取り出し、取っ手をガチャッと下ろしてロックを外した。これはスズメバチ用の最終兵器、射程距離はなんと十三メートルもある。ホームセンターで一つだけ残っていたとっておきの切り札だった。

 そして、クラウディアに近寄って言った。
「このトカゲ、倒しちゃっていいですか?」

 クラウディアは俺の方をキッとにらむ。