「ホーリークッション!」
 と叫ぶ。するとエステルの身体がぼわっと淡い光に包まれた。
「ソータ様、つかまるです!」
 そう言って手を出すエステル。
 俺がエステルの手をつかむと、エステルは、
「せーの、で飛ぶです!」
 と、俺の顔を見る。
 俺はうなずき、一緒に
「せーのっ!」「せーのっ!」
 と言って落とし穴に飛び込んだ。

 魔法のおかげで落ちる速度は緩やかだった。
 ふわふわとゆっくり真っ暗な落とし穴の中を落ちて行く……。

 ソイヤ――――! カン! カン! グオォォォ!

 戦闘音が徐々に大きくなってくる。
 すると、急に視界が開けた。そこは大きな広間になっていて、バスくらいのサイズの巨大な恐竜に似た魔物が暴れている。二本の長い首をブンブンと巧みに振り回し、翼を大きく羽ばたかせ、挑んでいる四人の冒険者を翻弄(ほんろう)していた。魔物はトカゲのような(いか)ついウロコに覆われ、巨大な口には鋭い牙が光っている。
 どうやったらあんなのを人間が倒せるのか、俺には想像もつかなかった。

「双頭のワイバーン!?」
 エステルが驚いて声を上げる。
「強いの?」
「珍しいAランクの魔物です! ただのワイバーンならBランクなんですが……。クラウディアさんのパーティだと厳しいかもです……」

 と、その時、ワイバーンの二つの頭がそれぞれ大きな口をパカッと開けた。

「来るよー!」
 クラウディアが叫ぶと同時にワイバーンがファイヤーブレスを放つ。二つの頭が前衛と後衛にそれぞれ火炎放射を浴びせ、辺りは火の海となった。

「キャ――――!」「ぐおぉぉぉ!」
 叫び声が上がる。

 火が収まると黒いローブをまとった女性が倒れていて、白い法衣をまとったクラウディアが走って治癒魔法を発動していた。









1-14. ハチ・アブ・マグナムZ

 俺たちはそっと脇の方に着陸したが……、これはどうしたらよいのだろうか?
 どう見ても苦戦している。助けた方がいいのではないだろうか?

 クラウディアは銀髪で緑色の瞳をした美しい女性で、口元をぎゅっと食いしばり、必死に戦っている。
 俺たちはクラウディアに近づいて、声をかけた。

「お手伝いしましょうか?」

 クラウディアは俺とエステルをチラッと一瞥(いちべつ)すると、