「ごめんなさい、どうしてももう一度エステルに会いたいんです。会わせてもらえませんか?」
すがりつくように言った。
「だから、彼女は記憶ないって言ってるじゃない」
先輩は俺の手を振り払い、あきれたように言う。
「なくてもいいんです、会わせてください!」
俺は必死に頭を下げた。もう俺の心の中にはエステルがたくさん沁み込んでしまっている。エステルなしには生きていけないのだ。
「君がそこまで入れ込んじゃうとはねぇ……。でも、記憶ない以上、無理なものは無理よ」
先輩は肩をすくめ、首を振る。
「じゃあ、賭けをしましょう!」
俺は最後の手に出た。先輩は勝負事が好きなのだ。
「賭け……?」
「エステルにプロポーズします。OKもらえたら異世界を元に戻してください」
「断られたら?」
「何でも言うこと聞きます」
「奴隷になるのでも?」
「もう何だって」
俺は真剣に先輩を見る。先輩は宙を眺め、何かを思案した。そして、
「面白いじゃない。いいわよ」
そう言ってニヤッと笑った。
俺の事を覚えていない人へのプロポーズ。どう考えても勝機はないが、それでもやらない訳にはいかない。
人生をかけた一世一代のプロポーズ、俺は全ての思いをしっかりとぶつけようと心に誓った。
「じゃあ、彼女呼ぶわよ」
「あ、呼ぶならあそこでお願いします。あの、地面が鏡みたいになってるところ」
「ウユニ塩湖?」
「そうです、そうです。魔物倉庫行く途中で見かけたので」
人生最大の賭けになる場所くらい、我がままを聞いてもらいたい。
「いいわよ。じゃぁウユニへ送るわ。奴隷になる覚悟はいい?」
先輩は意地悪な顔で言う。
「いつでもOKです。先輩こそ異世界を戻す準備しておいてくださいよ」
俺はニヤッと笑った。
勝ち目のない賭けだったが、俺はエステルに会える喜びで胸がいっぱいになった。
◇
気が付くと俺は見渡す限り広大な鏡の上にいた。正確には止まった水面なのだが、水面は夕暮れの太陽や茜色に染まる雲たちを反射し、水平線はるかかなたまで美しい空を映し出していた。
「うわぁ、綺麗ですぅ!」
気が付くと隣にはエステルがいた。
すがりつくように言った。
「だから、彼女は記憶ないって言ってるじゃない」
先輩は俺の手を振り払い、あきれたように言う。
「なくてもいいんです、会わせてください!」
俺は必死に頭を下げた。もう俺の心の中にはエステルがたくさん沁み込んでしまっている。エステルなしには生きていけないのだ。
「君がそこまで入れ込んじゃうとはねぇ……。でも、記憶ない以上、無理なものは無理よ」
先輩は肩をすくめ、首を振る。
「じゃあ、賭けをしましょう!」
俺は最後の手に出た。先輩は勝負事が好きなのだ。
「賭け……?」
「エステルにプロポーズします。OKもらえたら異世界を元に戻してください」
「断られたら?」
「何でも言うこと聞きます」
「奴隷になるのでも?」
「もう何だって」
俺は真剣に先輩を見る。先輩は宙を眺め、何かを思案した。そして、
「面白いじゃない。いいわよ」
そう言ってニヤッと笑った。
俺の事を覚えていない人へのプロポーズ。どう考えても勝機はないが、それでもやらない訳にはいかない。
人生をかけた一世一代のプロポーズ、俺は全ての思いをしっかりとぶつけようと心に誓った。
「じゃあ、彼女呼ぶわよ」
「あ、呼ぶならあそこでお願いします。あの、地面が鏡みたいになってるところ」
「ウユニ塩湖?」
「そうです、そうです。魔物倉庫行く途中で見かけたので」
人生最大の賭けになる場所くらい、我がままを聞いてもらいたい。
「いいわよ。じゃぁウユニへ送るわ。奴隷になる覚悟はいい?」
先輩は意地悪な顔で言う。
「いつでもOKです。先輩こそ異世界を戻す準備しておいてくださいよ」
俺はニヤッと笑った。
勝ち目のない賭けだったが、俺はエステルに会える喜びで胸がいっぱいになった。
◇
気が付くと俺は見渡す限り広大な鏡の上にいた。正確には止まった水面なのだが、水面は夕暮れの太陽や茜色に染まる雲たちを反射し、水平線はるかかなたまで美しい空を映し出していた。
「うわぁ、綺麗ですぅ!」
気が付くと隣にはエステルがいた。



