就活か魔王か!? 殺虫剤無双で愛と世界の謎を解け!~異世界でドジっ子と一緒に無双してたら世界の深淵へ

「……。新しい星を作るわ。縄文時代くらいからやり直し」
「そ、そんな。エステルは? みんなは見殺しですか?」
「見殺しになんてしないわよ。縄文人として赤ちゃんから再スタートよ」
「じょ、縄文人……。エステルも縄文人ですか?」
「そう、かわいい赤ちゃんになると思うわ」
 そう言ってニッコリと笑い、一口ワインを含んだ。
「俺の事なんてすっかり忘れて転生ですか……」
 先輩は肉を一切れフォークで刺すと、
「だからプロポーズを急げって言ったのよ」
 そう言って美味しそうにほお張った。
「え!?」
「結婚してたら日本人としてこっちに連れてこれたのにね」
「い、今からじゃダメですか?」
「んー、あの子記憶全部消されちゃったからね。今プロポーズしても逃げられちゃうわよ」
「え!?」
 唖然(あぜん)とした。マリアンめ、そこまでやるのか……。
 俺と過ごしたあの濃密な日々はもう俺の中にしかないらしい……。
 俺は言葉を失い、ガックリとして動けなくなった。

「可愛い女の子なんていくらでもいるじゃない。異世界の、それも人造人間にそこまでこだわらなくてもいいんじゃないの?」
 先輩はピザをつまみながら言った。
 理屈ではそうかもしれない。しかし、『ソータ様』と言ってニッコリと笑うあの可愛い娘がいいのだ。忘れられないのだ。
「うっ……、うっ……、うぅ……」
 俺はエステルを思い出し、またポタポタと涙を流した。
「ちょっと! まるで私が泣かせてるみたいじゃない……」
 先輩は少し慌てて周りを見る。

「そもそも、なぜ先輩は助けてくれなかったんですか?」
 俺は涙声で聞いた。
「女神は世界を作るのが仕事、基本干渉はしないわ。星で生まれた人たちが紡ぎだすオリジナリティあふれる文化・文明を邪魔しちゃダメなのよ」
「マリアンの人造人間もOKですか?」
「あれ、面白いと思うわよ。もちろん、エステルみたいな人だらけの社会はつまんなくなるけど、その過程や、つまんなくなった結果どうなるかは興味深いわ」
 俺は絶句した。この人にとっては非人道的な試みすら楽しみなのだ。













3-24. 最後の賭け

「今回は残念だったわね。それじゃ就活頑張って。そろそろ行くわ」
 先輩はそう言って立ち上がる。
 ヤバい、全てが終わってしまう。
 俺も急いで立ち上がり、先輩の腕をつかむ。