「んー、何を変えたらいいのかな…。
話してる感じそんな怖かったり暗かったりしないもんね。
麗香、どう思う?」

「自分から話しかければいいんじゃない?」

「何話せばいいのかわかんねぇんだよ。」

「何それ。コミュ障?」

麗香の的確な判断に、匡は
「あ~!そうだよ!」
と苛立ちながら開き直った。


「まぁ話題作りは置いといてさ、
やっぱわかりやすくイメチェンは?
話のネタにもなるし。」

「これでも十分イメチェンしてんだけど。」


たしかに、元ヤンとは想像もできない見た目だ。

黒淵メガネに、さっぱり整えられた黒髪。
制服も標準的な着崩し方だ。


「谷くん、もしかしてだて眼鏡?」
麗香が尋ねる。

「あー、そう。
俺目付き悪いから、直接目が合うと逃げられるかも、と思って。」

「メデューサか!
一旦メガネとって。」


麗香が無理矢理匡のメガネを奪い取ると、
匡の切れ長の目が現れた。

たしかにメガネがないほうが顔がしっくり来る感じだ。


「たしかに目付き悪いわね。」

「だから最初から言ってんだろ。」

「運動するときだけでも外したら?」


「ギャップってヤツだね!」

私が得意気に言うと、二人は意味不明と言いたげに私を見た。


「メガネとって話しかけづらさアップしてたらさらにダメね。」

「おい、人の顔面を凶器みたいに言うな。」

「似たようなものよ。
悔しかったら微笑みのひとつでも浮かべてみなさいよ。」


麗香の言葉にそれ以上なにも言い返せず、
匡は麗香から視線をそらした。


匡の苛立ちがどんどん溜まっているのがわかる。

麗香と匡の相性、もしや最悪だった…?


私は空気を読んでフォローする。

「でもやっぱり、メガネ時々とったらモテると思うな~。
あ、でも匡はモテたいわけじゃないのか…」

「都はどう思う?」

「え?」


匡は私にグッと顔を近づけると、真顔のまま
「メガネない方がいい?」
と尋ねた。

ち、近い近い!!


横から「どっちでも大差ないわよ」と、
麗香が悪態をつくけれど、匡は無視。


「え、っと…
そだね。たまにメガネ外したらドキッとする…かも」

!!?
私は何を言っているんだ!?

言葉選び間違えた!!

まるで私が匡を好きみたいな言い方になってしまった。


「ふ~ん」


匡は満足そうな笑みを浮かべると、
私との距離を離した。

ひとまずほっとする。


「じゃあ都と2人のときは、
メガネはずすようにする。」

「えっ」


そんな、私に合わせなくていいのに…

それに、匡の鋭い目で直接見つめられると、たしかに逃げ出したくなる。

怖いとかじゃなくて、なんか…


「そ、そっか。頑張って…?」


パニックになり、意味不明な返答をしたところで、麗香がパンっと手を叩いた。


「そろそろ帰りましょ。
迎え待たせてあるの。」

「ちっお嬢が」

「ごめんなさいね。裕福で♡
都だけは送ってあげる。帰ろう。」

「え、うん。いいのかな…」

「もちろん!」


匡は再び舌うちをすると、
カバンを雑につかんで一人帰っていった。

もはや匡は元ヤンであることを麗香に隠す気
あるんだろうか。


私たちもカバンを持って、自習室をあとにした。