「まずさらなる協力者を紹介します。」
匡との協力関係が始まった翌日、
私は昨日の自習室に匡を呼び出した。
私のとなりには麗香。
「麗香監督です!」
「監督なんて嫌よ。
せめてマネージャーって言って。」
「だそうです!
こちらは谷 匡平くん。」
私は麗香と匡を交互に紹介した。
麗香には昨日の夜のうちに電話で匡のことを話していた。
あくまで元ヤンっていうのは隠して、だけど。
「よろしく、麗香。」
匡は素直に挨拶し、握手のために手を差し出した。
麗香はその手を握り返さず、仏頂面をしている。
「私、いきなりファーストネームで呼ばれるの苦手なの。」
「……苗字は?」
「はあ…。クラスメイトの名前も覚えないで、
よく友達ほしいなんて言えるわね。」
「っ…」
麗香の正論に匡はなにも言えず手を引っ込めた。
「西園寺 麗香よ。よろしく。」
「西園寺!?お嬢みてぇな名前だな。」
「匡、麗香はお嬢みたいじゃなくて
本物のお嬢様だよ。」
「えっ」
「麗香のパパ、IT系の会社の社長さんなんだよね?」
「まぁ、そうだけど。」
麗香は私の質問におざなりに答えると、
匡を睨み付けて言った。
「人の名前とかをバカにするのはつまんない。
マネージャーとしての最初のアドバイスよ。」
匡はしばらく麗香の顔を見て、
ポカンとしていた。
「このように!私は小心者だからはっきり言えないことも、麗香マネージャーにかかれば一瞬で解決!」
「女にこんな毒吐かれたの初めてだ。
女じゃなきゃ殴ってるとこ」
そんな物騒なこと、
普通は言わないと思うけどな…
「谷くんの周りにはさぞかし優しい女の子ばかりだったんでしょうね。」
「いちいち言い方の腹立つやつだな。」
バトルになりそうなところを、慌てて話題を変える。
「匡の中学時代?
どんな女の子と仲良くしてたの?」
「仲良くなんてしてねぇよ。
ベタベタくっついてきただけ。」
「へぇー、やっぱりモテるんだね。ヤン」
速攻最大の秘密を言いかけて、慌てて口をつぐむ。
「"やん"?」
麗香の不思議がる問いかけ。
匡は表情は変えていないが、
漫画だったら背後に『ゴゴゴゴゴ…』っていう文字が入るだろう。
「…ヤングはモテるよね!
若いってそれだけで最強☆」
「なにアラサーみたいなこと言ってんのよ。」
「西園寺もたいがいだけど、
都ほどへらへら話しかけてくるやつもいなかった。」
そ、それは誉められているんでしょうか…?
「と、とにかく!
さっそく始めよう!!
匡に友達がいっぱいできるように改造するぞ!」



