「みっみんなの前で何してんの!?」
外階段の踊り場まで連れ出すと、
匡は1段目に座り込んだ。
お酒を飲んだという長崎くんの言葉を思い出す。
「匡…大丈夫…??」
とりあえずお水を持ってこようと店内に戻る扉のドアノブに手を掛けた。
「大丈夫じゃない」
「え…?」
手を後ろに引っ張られ、バランスを崩す。
転ぶ…!
痛みを覚悟したが、熱くて大きい腕に支えられた。
つむっていた目を開けると、匡の膝の上に座っている状態。
また私の体温は急上昇した。
顔が溶けそうなくらい熱い…
「あんなんじゃ足りない」
獣のように鋭く光る瞳
が、近づいてくる。
「んぅ…っ」
熱い唇が私の唇に触れる。
「…口開けて」
「へ…っあ」
「好きだよ、都」
「きょ…う」
私たちはしばらく深いキスに溺れていた。
*****
「なんで目ぇそらしたんだよ」
「ハァ…ハァ…」
食べられるかと思った…。
私の呼吸が限界になった頃、匡は私を抱き締めながら聞いた。
「さっき」
「それは…!」
抱き締める力を弱めた匡は私の顔を至近距離で見つめる。
私は匡の胸に顔をうずめた。
「なんだよ?」
「匡と目が合うと…
ムラムラします…」
「ブハッ」
「んなっ、笑わないでよ!
めっちゃ勇気だしたのに…!」
「だってお前っ…それフツー男のセリフ…っ」
爆笑する匡にムカつき、膝の上から立ち上がろうと身をよじる。
「まだ。もーちょい」
匡はそんな私をぎゅっとつかみ直す。
「何よ!酔っぱらい!」
「もう覚めたっつの。
都がそっけない態度とるから、かまってほしくてほんの一口舐めただけ。」
「バカ…それでもお酒はダメだよ…。」
「もうしねぇ」
真剣なトーンの言葉に安心した。
匡の顔を見上げる。優しい目と視線が合う。
「好きな子と両想いになれた日くらい舞い上がってもいいだろ?」
「…っ///」
そんな嬉しい言葉…
「都は触りたい時に俺に触っていいよ。」
「……」
私は黙ったまま匡の肩に触れた。
固い…。女の子と全然違う。
首に触れ、喉仏に触れる。
「触ったら苦しいの?」
「そんくらいの強さなら大丈夫」
体が…熱い…
首を伸ばし、喉仏に唇を当てる。
匡の体がピクッと反応した。
ふふっ…笑った仕返しだ!
骨張った首筋
匡の匂いがする。
唇を這わすように首にキスをした。
「ちょ、都…」
「えへへ、私の勇気を笑った仕返し!」
「っ…」
匡は無理やり私の体を膝の上から下ろした。
「悪かった!これ以上やったら都のこと襲う。」
「えっ!?///」
「お前はまだまだガキだな」
「っ何よ…」
「続きはもうちょいあとな。」
妖しい笑顔を浮かべると、匡も立ち上がり「戻るか」と言った。
カラオケルームに戻った私たちは案の定クラスメイトから怒涛の質問攻撃に合う。
そんな冷やかしの中もお構いなしに、
匡は私の横にピッタリ張り付いて離れない。
私の顔は確実に真っ赤だろう。
恥ずかしいとか気まずいとかいう感情がこの人にはないんだろうか…!
やっぱりこの人はコミュ障だ!!
だけどそんな匡とのこの距離感が何よりも心地よくて愛おしい。
私を救ってくれた。
私を信じてくれた。
そして何度も好きだと伝えてくれる。
これから先も私はその想いを信じて、
同じくらいの好きを返していく。
「匡、大好きだよ」
こっそり耳元で伝えた言葉に匡は顔を赤らめた。
コミュ障な元ヤンくんは今日も可愛くてカッコいいーー私の大好きな人。
~完~



