「そんなこんなで、晴れて私と匡の目標は達成です!」

パチパチパチ…と、私が手を叩くと
麗香は間髪入れず私の頭をひっぱたいた。

「いたいっ」

「っ…」

麗香は不機嫌全開の顔を私から背けた。


私と匡が付き合うことになり、
カフェの休憩時間にそのことを麗香に伝えた。

喜んでくれると思ってたけど…


「れ、麗香。ごめん。
ちょっとふざけすぎた。
いろいろ背中押してくれてありがとう。」

私が笑顔でそう言うと、
麗香はそらしていた視線を私に向け直してくれた。

「背中なんて押してないわ。
都が悩んでるとき、『知らない』って突き放したじゃない。」

「それは自分で考えろ的なメッセージじゃ…」

「…っそうだけど!!
それだけじゃない!
私、そんなにいい人間じゃないわ!」


珍しく麗香が声を荒げたので驚いていると、
麗香の目から涙がこぼれた。

「ええっ!!?
れ、れれれ麗香ぁ!?」

それを見て、私は今日一番驚く。
だって麗香が泣いてるの初めて見るし…


「都が谷くんと付き合うなんて本当は嫌よ!
私と会う時間が減るじゃない。」

「麗香…」

「谷くんなんて嫌いよ!
あんな…情けないくせに暴力振るうヤツなんて…」

「麗香…そんなに私のこと…」


私も目に涙を浮かべ、感情そのまま麗香に抱きつこうとすると、

まさかの華麗に避けられた。


床に膝をつき「なんで!!」と、顔を真っ赤にして振り返る。

「やめてよ、暑苦しい。」

ガーーン
「…す…すいません…。」

「谷くんなんて大嫌い。
…だっていい人だもの。」

「麗香…」

「そんなこと都の次にわかってるわ。
だからこそ、都をとられるのが嫌なのよ。」

「匡とおんなじくらい麗香のことだって大好きだし、これからも麗香と一緒にいるのは変わらないよ。」

「それでも時間は減るわ。」

「密度=愛×時間。
これからは麗香との愛をさらに深めて…」

「なにその公式。うざい。」

ガーーン

結構ポエミーでいいと思ったのに。


麗香ははーっとため息をついて、涙をぬぐうと、いつもの余裕な笑顔を浮かべた。


「駄々こねてごめんなさい。
都の恋が実ってよかったわ。おめでとう。
これからもよろしくね。」

「も、もちろんだよ!
ありがとう!!」


私が再び抱きつこうとすると、
やっぱり「暑苦しい」と避けられるのであった。