開店すると、すぐにお客さんで教室が賑わった。
コンセプト通り、ヤンキー口調(私はギャル口調)で接客をする。
「いらっしゃ~い。注文はどうする感じ?」
(都)
「あ…じゃあコーヒー2つで。」
「おけまる~☆」(都)
わ、私は何をやっているんだ…
このモヤモヤをほったらかして
こんな恥ずかしいことしてていいのか…
「あの、すいません」
「はいはーい。何ぃ?」(都)
「ははっ、似合うじゃん。都ちゃん」
「可愛い~!」
名前を呼ばれて、営業スマイルをやめて改めてお客さんを見る。
他校の制服を着た男子2人だ。
どっかで見たことあるような…
「え…えっと…」
「覚えてない?匡の中学の友達だよ。」
「あっ!祐介くん!と、太一くんだよね?」
夏祭りで会った匡の友達だ。
「名前覚えててくれたんだ~」
太一くんは私の手を握り、ブンブン振り回した。
「コーヒーとオレンジジュースください」
祐介くんが落ち着いた笑顔でそう言った。
「あっ、はい!
じゃなくて、おけまる☆」
照れつつ、顔の横でピースサインを作ると、
祐介くんと太一くんは楽しそうにケラケラ笑ってくれた。
「アハハ!すぐ持ってくるね。」
調理コーナーに行くと、ちょうど匡がお茶を入れていた。
話題があってよかった。
緊張せずに話せる。
「匡!祐介くんと太一くんが来てくれてるよ。」
「え?」
「コーヒーとオレンジ。
作っていくから、先に話してきたら?」
「あいつら…
いいよ。すぐできるから、一緒に行こう。」
「あ、うん…」
騒がしいパーテーションの向こう側。
私は黙って匡が飲み物を作るのを待つ。
くっきりとした金髪に目がいく。
中学の時と同じ格好でも、中身はきっと変わったんだろうな。
友達がほしくてイメチェンしちゃう可愛いヤツで、麗香の押しには弱くって、私を好きだと言ってくれる…。
今まで私と麗香しか知らなかった…匡。
「できた。」
匡の言葉にハッとなる。
「あ、ありがと。」
「…」
「行こう!」
私が笑顔になると、匡も微笑んでホールに歩き出した。



