「谷くんじゃない?」

「そうかも。行ってみよう。」


なんか…
ヤンキーの格好してきた匡をおもしろがる笑いより、女子の黄色い声が聞こえるような…


人混みの中を覗く。

そこにいた匡の姿に、思わず「えっ!?」と声を出してしまった。


黒い人混みの中、ひときわ目立つ金色。


金髪で、いつもの制服の学ランを着崩している。

ていうか、どう見てもあの金髪、カツラじゃなくて染めてるよね!?


そう言えば匡の中学の同級生の…
ユカさん?が昔金髪だったって言ってた。


「都」

人混みの中、当たり前のように私を見つける匡。

以前の公開告白を目撃しているクラスメイトたちは
ニヤニヤしながら私と匡の間に道を作った。


「き、匡…その頭…」

「昨日染めた。」

「そ、染めたって…!いいの?」

「別に…
ヤンキーっていうコンセプトでありのままで来いとか言われたら、中学の格好するしかないじゃん。」

「そ、それは…」


でもそうだ。
クラスメイトと仲良くなりたくて元ヤンであることを隠していただけで、もはや文化祭のテーマでいじられるほどクラスに馴染んだ匡には、髪色なんてどうでもいいのか。

校則違反でもないし…。


女子たちの「かっこいいよね」という囁きが
耳に入る。


もう一度匡を見上げる。

直してかけていた真面目そうなメガネをはずし、
鋭い目が直接私の目を覗いている。

ワイシャツは第2ボタンまで開けている。

これが…中学の時の匡…。

いや、きっと中学より大人っぽくなってるはずだ。


「っ…////」



「そろそろ開店するよー!」

実行委員の子の呼び掛けで
匡と私の周りの人だかりは離れていく。


「谷くん、あとで写真撮ろうね~」
「谷、俺ともな。」

「えっ、ああ。」

嬉しそうに笑う匡。


そんな匡を見て、モヤモヤするのはなんでだろう…。