学校に着き、匡の隣を歩いていると
周囲の視線が注がれていることに気づく。


「なんか注目されてる…?」

「最近は俺が歩くとみんな不自然に目そらしてたのに、都と歩くと逆に大注目されんだな。」

「えっ」

たしかにみんな私を見てひそひそと噂している。

あの不良が女連れ!?
もしやあの女子もヤンキー?

とか、言われてるんだろうか…。

私は恥ずかしくなって下を向いた。


教室に着き、扉のすぐ近くの席に座る奈々ちゃんに挨拶をする。

「おはよー!」

「都、おは…え!?」

奈々ちゃんはすぐ後ろの匡を見て、
驚きの声をあげた。

「た…谷くん…。
都、仲直りしたの…?」

少々大袈裟になった麗香の振り払い事件
それと、校内での先輩襟首掴みあげ事件を経て、
奈々ちゃんを含めたクラス全体に匡を怖がる空気感が広がっていた。

「うん。そうなの。」

私がにっこり笑うと、奈々ちゃんは少し安心したような表情を浮かべた。


「奈々。」

匡は相変わらずの呼び方。

奈々ちゃんは伺うように「なに?」と尋ねた。


「悪かった。怖い思いさせて…」

「……」

「ちょっとイライラしてたんだ。
そんなときあるだろ?」

「そ、そうかな…?」

「また友達になってくれないか?」


昨日までは虎が牙剥き出してるみたいだったのに、
今日は子犬がおねだりするような上目遣い。

なんかズルい…!


「わ、わかったよ…。
でも麗香にはちゃんと謝るんだよ?」

「謝ったよ。あと罰も受けた。」

さっきより広がったアザを見せると、
奈々ちゃんはぷっと吹き出した。

「麗香こえぇ~!」

和んだ空気に私も笑顔がこぼれた。


「…谷。」


その時、扉から入ってきたのは長崎くん。

私を再び小さな緊張が襲った。