「ふ…不埒なことをしてしまった…。」

「朝から何よ。」


翌日ーー

麗香に昨日のことを話した。


「あ、あれってでぃ、ディープき、キス…?」

「…そうね」

「まだ付き合ってないのに!なんてことを!」

私は頭を抱えて悶絶する。

「まぁ中立立場の私としては、仕方ないとは思うけど。
女としては、付き合う前の乙女に何してくれてんだ、あの元ヤンって感じだわ。」

「アハハ…拒否しなかった私も悪いし…。」

麗香はへらへら笑う私の顔を見て、
目を細めて笑った。

「よかったわね。自分の気持ちが伝わって。」

「うん」

「それにしても、谷くんどうするつもりなのかしら。
都への愛がそう簡単に変わらないことを証明しなくちゃでしょ?」

「あっ愛って…!///」


でもたしかにそうだ。

匡はずっと一緒にいたいっていう私の気持ちを汲んでくれて、麗香の言う愛ってのが伝わるまで恋人にならなくていいって言ってくれた。

どうするんだろう…。


「はよ。」


後ろから声をかけられ、ビクッと反応する。

反射的に顔の熱が上がる。


「おはよう、谷くん。」
「おはよう。匡。」

振り返ると、いつもの匡。

昨日までの目付きが悪かった顔と違う。


「谷くんから挨拶してくれるなんて…
もう不良はいいの?」

「どーせ都から聞いてるんだろ。
やけくそは終わりだ。」

「そう…。じゃあちょっと腕貸してくれない?」

「腕?」

麗香に言われ、はてなを浮かべたまま
匡は麗香に左腕を差し出した。

麗香はきれいな手でそっと袖をまくる。

その妖艶な仕草に、私も匡も呆けていた
次の瞬間
「っいっ!!!!てぇ!!」

匡は思いっきり麗香の腕を振り払った。

「大袈裟ね。」

「な、なんでいきなりつねるんだよ!」


匡の腕を見ると、赤いというより赤紫。

絶対内出血してる。

大袈裟ではない強さで麗香が匡の腕をつねったのだ。


「谷くん、ヤンキー化した日私のこと振り払ったじゃない。すんごいムカついたの。」

「…悪かったよ。」

「あと都に野蛮なことしたんでしょ。
気持ち悪いわ。」

「気持ち悪いとか言うな。」


麗香はすっきりした笑顔を私たちに向けた。


「これでチャラにしてあげる。
せいぜい頑張んなさいよ。
ただし都を傷つけたら、今度はつねるだけじゃ済まないからね。」

私と匡はごくりと唾を飲んだ。

「さすがに素手で人の肉は千切れないわよね?
道具がいるわね。」

麗香のとんでもない発言に、私は固まる。

それ以上に匡は固まり、冷や汗を流した。


麗香はそんな私たちの様子を見て、
Sっ気たっぷりの笑顔を浮かべた。