人気のない空き教室。
こんなところ、来たことない。
「匡…?」
小さな呼び掛けに答えてくれる人はいない。
「匡くんって、どんな子がタイプなの?」
この声…!
松田さんだ!
私は声のする方へ恐る恐る近づく。
「タイプ?」
「うん。あたしは?」
「……。」
タイプ…
匡の?
それは是非とも気になる…じゃなくて!!
「あたし、悪い男の子好きなんだぁ。
かっこいいし、」
松田さんは匡の顔にぐっと自分の顔を近づけた。
「エッチだし。」
「や、やめて!」
無意識のうちに私は叫んで飛び出していた。
二人は呆然と私を見ている。
「あの…覗いていたわけではなくて…」
いや、覗いてたな。
「と、とにかく…」
「とにかく嫌?」
松田さんは整った笑顔を私に向けた。
「い…いや…そう。なんか…嫌で…。」
「プッ…『なんか嫌』?何それ。」
「だって…!匡は私の友達で…」
「友達に彼女ができたら嫌なの?
意味わかんない。」
松田さんに言われて、私はとてつもなく納得した。
今言葉を発したら、『たしかに!』しか出てこない。
ずっと友達としてやっていこうと覚悟していたはずなのに。
え?私ってバカ?ニワトリ?
「ねぇ、匡くん。チューしよ。」
「えっ」
何も言い返せない私に飽きて、
松田さんはとんでもないことを言い出した。
「な、なんで…!」
「まじうっさ。近衛さんどっかいってよ。」
「チューって…!なんで!」
「えぇ~?」
松田さんの妖艶な笑顔が私に向けられる。
「したいから。」
私は一度冷静になる。
松田さんは匡とキスがしたい。
私は振った相手が他の子とキスするのがなんか嫌。
匡は…
どう考えても、決定権は匡にある。
私がなんか言う筋合いはない。
ない。うん、ない。
ない…けど…
「チューなんかでいいの?」
匡は松田さんの顔を見て尋ねた。
「え…」
「いい!いい!
気に入ってくれたら、正式に付き合お。
私、チュー上手いよ?」
「へぇ、そりゃいいな。」
嘘…
匡は松田さんに顔を近づける。
松田さんは顔を赤くして、目を閉じた。
やだ。
嫌だ!!



