「都!麗香!た、谷くんが大変だよ!!」
夏休み明け、2回目の登校日。
私と麗香のもとに奈々ちゃんが大慌てで走ってきた。
「どうしたの?慌てて…き、匡…?」
「谷くんが…谷くんが…
不良になっちゃったんだよ!!」
「「えっ!?」」
「メガネしてなくて、口調も荒くて!
顔にケンカしたみたいな怪我もあるし…」
さすがの麗香も驚きを隠せない様子。
私たちにはひとつの心当たりがあった。
話は始業式のあった昨日に遡る。
***
始業式のその日は、花火大会以来、
匡に会う初めての日だった。
二人きりで匡に手を握られて見た花火。
あのあと結局麗香たちは戻ってこなかった。
今になってわかる。
麗香と長崎くんはあえてあの時飲み物を買いに行ったんだ…。
あまり会話もせずにその日は別れたから、
今日は緊張している。
朝、教室に入ると、すでに匡は来ていた。
麗香はまだ…。
匡のところ、行かないと変だよね…
私は覚悟を決めて、匡の席へ向かった。
「…匡、おっはよー!」
「…はよ」
「アハハ!夏休み終わっちゃったね。」
「ああ。」
「一昨日から宿題ラッシュでもうへとへとだよ~」
「…」
なんでこんなテンション低いの…!?
私一人で明るくして、アホみたいじゃんか!
「麗香なんて昨日余裕でドラマのネタバレしてきて…「都」
「へ?」
真剣な眼差しの匡。
私の心臓がまた速度を上げる。
この感じ…花火大会のときと一緒…
「な、に…。」
「放課後二人で帰んない?話がある。」
「わ、わかった!麗香に言っとくよ!」
「ありがとう」
そんな安心した顔しないでよ。
私、告白されるのかな…。
私、匡と付き合いたいのかな…。
「…またあとで…」
私はその場から離れて、自分の席に戻った。
小さなため息が漏れる。
確かに花火大会のとき、思ったんだ。
彼氏がほしくなくなったのも、
匡の言動にドキドキするのも、
私が匡を好きだからって…
気持ちを自覚して、それなのに、
匡の気持ちを素直に受け止められない自分がいる。
匡と恋人…
「……。」
私にはずっと考えていたことがある。



