コミュ障な元ヤンくんに今日も溺愛されてます。




「なるほどね、だいたいわかった。」

長崎くんが納得したように頷く。

「え?」

長崎くんは匡に耳打ちをすると、
「早速屋台回ろうか。」
と、私たちに呼び掛けた。


「そうね。」

麗香はためらうことなく歩き出した。

麗香や匡だけでなく、長崎くんの言動もよくわからない。

考える間もなく、歩き出したみんなとはぐれないように、私も麗香の隣に並んだ。


「最初はどこ行く?」

「とりあえず腹減ったな。」


男子二人が前を歩き、私と麗香があとをついていく。


男の子とお祭りってなんか新鮮。

周りより少し高い位置にある二人の頭。

後ろをついていくと、すごい人混みにも関わらずスイスイ進むことができる。


「次は彼氏と来れたらいいわね、都」

「あっうん。そうだね…。」

「……。」


ファミレスでの勉強会以来、
相変わらず高まらない彼氏作りへの意欲。

私の気のない返事に、麗香は気づいているだろうに何も言わなかった。


彼氏と…

今は男子の後ろだけど、
付き合ったら横…。

はぐれないように手を繋いで、
ごはんをはんぶんこしたりして…

そして、花火が上がったらこっそりキスを…




誰と?




妄想の世界にふとよぎった顔。


匡ーー


「うわぁああ!」

私は恥ずかしさで思わず奇声を発した。


「都!?」
「どうした?」

いや~!
こっち見ないで!!

みんなに心配されるが、
赤くなった顔を隠すように背けた。


「せ、セミがいて…アハハ…」

「いちいち騒がないでよね。」

「ごめんね、麗香」匡も…

妄想に勝手に出演させてごめんね。

違うの。
今のは、一番仲いい男子を脳が勝手に当てはめてしまっただけで、
好きとかそういうのでは…


誰にも届かない言い訳を脳内で並べ、
なんとか落ち着きを取り戻していく。


ひとまずみんながまた歩き出したのでほっとする。

すると、麗香が前に聞こえない声量で私に言った。

「都はどうして彼氏がほしかったの?」

「え…漠然と…。楽しそうだなって。
あと、中学のいやな思い出を乗り越えられたらって思って。」

「トラウマは乗り越えられた?」

私は麗香の目を見て笑顔で頷いた。

「乗り越えられたよ。」

「そう。じゃああとは恋をするだけね。」

「恋…」


そっか。
当たり前だけど、彼氏を作るのには普通恋をするものなのか…

なんだかそんな当たり前のことに、
今気づいたような気がする。