「谷くん、もしかして不良?」
ファミレスに戻った私たちに
麗香はドンピシャな推理を披露した。
「え…いや…。な、なんで」
久々に匡がキョドってるの見たな…。
「普通に路地裏に間下くんのこと連れてくの見えたし。
ケンカでもしてたの?」
「ケンカじゃねぇよ!
俺が殴っただけだし…」
子供みたいな言い訳してる…。
「まぁ言い訳なんてどうでもいいけど。
間下くんをボコボコにしてくれたなら。」
「俺にペコペコ頭下げるくらいには。」
「プッ…」
麗香は手元の紅茶をゆっくり飲むと、
「最高♡」
と呟いた。
ひぇ~!ドS!!
怖いはずなのに、ニヤリと笑う麗香をどうしてもキレイだと思ってしまう。
「あ、麗香。
ちなみに匡は現役じゃなくて"元"ヤンらしいから!」
「元?今さっきあのカスをボコボコにしたのに?」
「元だ。」
匡は強調するように繰り返した。
「まぁどうでもいいけどね。」
「西園寺も気にしないのか…?」
「まぁ…。
谷くんの情けない姿しか見てないからかしら。」
「ああ、そうかよ。」
匡は半分不機嫌になり、麗香から顔をそむけた。
「今日はそろそろ帰りましょ。
都、次会うときまでに宿題進めなさいよ。」
「次って…あ!花火!
花火大会いこうよ!」
私の提案に、二人は荷物を片付ける手を止めた。
「花火大会?どこの?」
「待ってね!」
スマホを高速スピードで操り、近所の花火大会を調べまくる。
やっぱ夏だし、浴衣とか着て、
二人と一緒に花火見たい!
「ここは?西地区花火大会。」
「ああ、これ大きいやつよね?
その日、ちょうど習い事も休みだわ。」
「……」
「匡は?」
「まぁいいけど。」
匡の返事に一瞬間があった気がしたが、
特に気にすることもなく
私は満面の笑顔を浮かべた。
「じゃあ20日17時、西神社ね!」
かくして、私たちは夏休みの最後の思い出作りに
花火大会に行くことにしたのだ。



