ノートを置いて、パンパンっと手を払った。

よし、帰ろっと…


ふと、谷くんの机の上から
『ポコンッ』
と、メッセージ通知の音が鳴り、反射的に振り返った。


「あ、スマホ…」

忘れてる…?
カバンはないし…

置きっぱなしでいいのかな…?


谷くんの席のスマホを取ろうと手を伸ばしたとき、
教室の扉がガラッと音を立てて開いた。


「あ、谷…くん」

で、合ってるよね!?

うつむいてるし、メガネだし(←関係ない)、
ちょっと自信ない…


「…おつかれ」

あ、話しかけてくれた!

「お、おつかれ~!」


初めて声聞いた…。

いや、英語の授業中とか声は発してたと思うけど。

おつかれ、とか言ってくれるんだ。

それに、思ったより低い芯の通った声だった。


「あ、スマホ!机に忘れてたよ。」

「え…」


谷くんは私の方に向かってきたので、
伸ばしかけた手を再び伸ばし、
谷くんのスマホを手渡した。

「…ありがと」

谷くんはそれとなくスマホの画面を見ると、
驚いたような表情を浮かべた。



「??」

「が、画面見た…!?」

「えっと…」

「俺、今は違うから。
あくまで"元"ヤンだから!」








「へ。」


「え…」