間下は私の顔をじっと見下ろす。


何を言うつもり…?

私をどん底に突き落とした言葉を最後に、
目を見合わせて何かを言われるのは久々だ。


心臓が鼓動するたびに沈んでいくよう。

言葉を待つ時間、実際よりずっと長く感じた。


間下はゆっくり口を開いた。



「久しぶりだな。近衛。」


「え…」

「??」


間下は不思議そうに私を見る。


旧友に会ったときの当たり前の挨拶。

あ、そっか。
間下の陰口を私が聞いていたこと、知らないんだ。


「ひ、ひさ…ひ…さし…」

あ、あれ?

うまく 言葉がでない。


「ハハッ、なにキョドってんだよ。
近衛、コミュ力の塊だったくせに。」

「…っ……」


言葉の代わりに涙が出そうだ。

今すぐこの場から逃げ出したい…!


「間下くん、久しぶり。さようなら。」

私の様子を見て、麗香がピシャリと言い放った。

「は?西園寺ひどっ」

間下は冗談だと思ったのか、ケラケラと笑っている。



「なぁ近衛。
また暇なとき会おうぜ。」

間下が私に言った。

血の気が引くのを感じる。

私は軽い女だと思われてるんだろうか。

また会ったら『ヤれる』って…

悔しい。

どうして私は、こんな人のことを…


「なぁ」
間下が私に近づいた。


『お前の距離感おかしいよ』


そう言ったのは…

間下なのに…。


瞳に溜めた涙を見られないようにうつむいたとき



「お前誰。」



私のとなりから声が聞こえた。