1時間ほどたち、ご飯を食べ終えた私たちは1回目の席替えをした。

今度の向かいは長崎くんだった。


「お、近衛。よろしく」

「アハハ!よろしく~」


長崎くんなら緊張しない。

私は笑顔で席に座った。


「みんな私服で新鮮だよな。」

「そうだね。たしかに。」

「近衛も、私服だと感じ変わるな。」

「そう…かな?」

「大人っぽい服、似合う。」

長崎くんの顔を見ると、にっこり落ち着いた笑顔を向けられた。

そんな、真っ正面から誉められると照れる…。

私はデザートを選ぶふりで、赤くなった顔を伏せた。


「あら、自由時間ね。本読んでいいかしら。」

隣に座った麗香がそう言った。
向かいを見ると、しかめっ面の匡。

やっぱりか…

私と長崎くんは笑ってしまった。

「俺だって西園寺と今さら話すことねぇよ。」

「引き出しのない男ね。」

「ホント、二人って仲が良いのか悪いのか」

長崎くんの疑問に私はこっそり耳打ちをする。

「めっちゃ仲良しだよ。」

聞こえていないはずなのに、麗香と匡が睨むから、私と長崎くんはまた笑ってしまった。


楽しそうな私たちの会話に奈々ちゃんたち4人も「なになに?」と話に加わった。

なんだかんだ8人でわいわい話していたとき、
匡の隣の須藤くんが匡の顔を見て言った。


「あれ、谷ってもしやイケメン…!?」

「え?」
「イケメン!?」

すかさず食いつく奈々ちゃんと春佳に
みんな笑うが、匡だけ顔を背けた。


「メガネ取ってみろよ。」

「あっおい。」


匡のメガネを須藤くんが奪い取ると、
みんな一瞬沈黙した。


「ホントぉ…」
「お前カッコいいじゃん。」

「いや、そんなこと…」

メガネを外した匡をみんなが知ってしまった…。

胸のなかに言い様のないモヤモヤが広がる。

「もったいねぇよ。コンタクトにすれば?」

「てかこれダテメじゃん!」

「え~なんで!?」


「俺、目付き悪いから。」

そう恥ずかしそうに言った匡は
須藤くんからメガネをとると、
隠すようにかけ直した。

「何それ、可愛い~♡」

奈々ちゃんと春佳が顔を見合わせて言う。


匡が可愛いことを知ってたのも、
私と麗香だけだったのに…。


そのとき、黙っている私と匡の目が合った。


会話が盛り上がっているのは、向こう側なのに…
どうして私の方を…?


「約束したもんな、都。」

「え!?」

いきなり何??

「俺がメガネとるのは都といるときだけだって。」

「な!!!??」


「「「ええーー!!」」」
「何それ!詳しく!」
「やっぱり二人って付き合って…?」


絶叫するみんなに私は違う違う!と否定し続ける。

なんでそんなこと言ったの!?

たしかに友達になった最初の頃、そんな感じの話をしてたけど…

あのとき限りの冗談でしょ!?


匡は立ち上がると、私の手首をつかんだ。


「外出よう」


「「きゃぁあ~!」」

奈々ちゃんと春佳の黄色い声。

自分の処理能力の限界を感じ、
麗香に助けを求めると、
そこには信じられない光景。



紅茶を…
紅茶を飲んでいる…!?


猫舌の麗香がふーふー紅茶を冷ましている光景を愕然と見ながら、引っ張られるがままに、私と匡は一度ファミレスから出た。