「谷、サッカーの人数足りねぇんだ。」

「ああ…いく。」


昼休みーー
最近よく見る光景。

私と麗香と一緒にご飯を食べるのは相変わらずだけど、食べたあとは男子から遊びに誘われることが増えた。


「成長したわね。谷くん。」

「ほんと!」


そんな匡を生温かい目で見る私と麗香。


高校1年生の1学期も終わる頃、
ようやく匡はクラスに馴染んできた。

数ヵ月前まで『どこ中?』とかモゴモゴ聞いていたのが信じられない。


私はあの頃の匡を思い出して、思わずくすっと
笑ってしまった。


「なによ。」

麗香が興味なさそうに尋ねる。

「コミュ障爆発してた匡を思い出してたの。」

「今だってまぁまぁコミュ障よ。
長崎くんのお陰でしょ。」

「たしかに。」


匡の男友達第一号の長崎くんの力はすごかった。

長崎くんと仲良くなってから、あっという間に男子の輪に入れてたもんな…。


「というか、こんなのでいいわけ?都」

「え?何が?」

「協力よ。
谷くんに友達が、都に彼氏ができるようにっていう約束でしょう?」

「…そうだよね。」


正直ちょっと忘れかけていた。

彼氏はほしい。
トラウマを乗り越えるためにも。

でも…なんだか…


「なによ。やる気なくなっちゃったわけ?」

「そうじゃなくて!
ポジティブな理由だよ。」

麗香はなにも言わず私の次の言葉を待った。

「…今が楽しいんだ。私。
麗香と匡と毎日話して、笑って…」

「じゃあこのまま高校卒業してもいいんだ?」

「そんな意地悪な聞き方しないでよ~」

「谷くんに合コン開催してもらうんだって
最初意気込んでたじゃない。」

「…そうだね。
そろそろ私もやる気出さなきゃ。
せっかくの夏休みだし!」

ガッツポーズをする私を見て、
麗香は満足そうに頷いた。