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「じゃあ先に帰るからね。」
「うん、また明日~。
習い事がんば!」
「また明日」
習い事のある麗香に手を振り、
私は手元の大量のノートに視線を落とした。
授業が終わり、いつものように麗香と一緒に帰ろうと思ったら先生に押し付けられたのだ。
誰とでも仲良くなれるのが取り柄とは言ったけど、先生と仲良くなると雑用を頼まれるから考えものだ。
私はふーっとため息をつき、
部活やら帰宅やらで誰もいなくなった教室を見渡した。
「やるか!」
ノートをクラスメイトの机の上に並べる作業にとりかかる。
もうクラスメイトの名前も顔も席も覚えたから、正直この仕事は楽勝だ。
佐藤くん、奈々ちゃん、河西くん…
てきぱきとノートを配り、5分ほどで作業も終盤に差し掛かった。
「谷 匡平…」
最後に残ったノートを見て、固まる。
谷くん…
席どこだっけ…
確かメガネをかけてておとなしい人だ。
話したこともないし、目立たないから…
席わかんなくてもしょうがない!うん!
全員の席を覚えられていなかったことに
ちょっと悔しさを感じつつ、
黒板のとなりの座席表から谷くんの席を探しだした。



