「二人は付き合ってるんじゃないのか…?」

不安そうに尋ねる長崎くんに、
私は何度も激しく首を振る。

「そうか…」

「私の髪についたごみをとってくれただけだよ!
ね?匡」

「ああ…」

匡はうつむいたまま、ぼそりと言った。

またコミュ障発動してる…。

コミュ障っていうか、人見知り…?

「俺より朝早くに来てる人、部活生以外で初めて見たよ。勉強?」

「アハハ…そう。
私、バカだから匡に教えてもらおうと思って。」

「西園寺さんは?仲良いよね?」

「麗香は朝ダメだから!」

「へぇ~、意外だな。」

長崎くんとの会話が盛り上がる中、
匡は黙ったまま。

しょうがない。
話題を振ってあげるか…。

「匡もだけど、長崎くんも頭いいよね?
匡は一夜漬け派なの?」

「そう…だな。」

「長崎くんはコツコツ派だもんね。」

「家族が家出るの早いから、合わせてるだけだよ。」

「えらいよ~。あたしだったら寝てる。」

ちょっとちょっと、匡~!
相づち打つだけじゃん!!


「長崎」

「ん?」

お、匡から声かけた!
頑張れ!

「その…
ど、どこ中!?」

「え?中学?」
「ブハッッ!!」

「近衛?」


奈々ちゃんにも中学聞いてたし、
初めて話す人には、いっつもその話題なわけ?

微妙にヤンキー感が残ってるのがおもしろい。


「ごめんね、長崎くん。
この人コミュ障で…」

「おい、都!」

匡は顔を赤くして、立ち上がった。

「アハハ…
匡ね、長崎くんと友達になりたいんだよ。」

「え!?」

長崎くんは改めて匡の顔を見る。

「悪い。うまく言えなくて…」

匡はしゅんとして座り直した。

「東中だよ。」

「えっ…」

「東中学。谷は?」

「西。」

「へぇ~。不良多いって有名だよな。」

ドキッーー!

「まぁ、そうだったな…」

「谷、いじめられたりしなかったか?」

「まったく」

「そっか。ならよかったよ。
これからよろしくな。」


匡は嬉しそうに笑った。

「よろしく…。」

私もつられて笑顔になる。

こうして、匡の男友達第一号ができた。