「もしかして、長崎を彼氏にしようとか思ってる?」

「えっ!いや、それはさすがに…」

「考えてないの?」

「そ、そうだね。」

「そうか…。」

「匡が長崎くんと仲良くなれたら
合コンでも企画してよ!アハハ…」

「合コン…」


匡は黒板に向けていた視線を私に移した。


「そうだよ。そしたら、奈々ちゃんと春佳以外の女子とも…男子とも仲良くなれるよ。
一石二鳥!」

「都は、どうして彼氏ほしいの?」

「ど、どうしてって…そうだな。」

正直漠然と"ほしい!"って思ってただけの部分が大きい。
過去のトラウマを払拭したいっていうのが無意識的にあるんだろうな…。
だけど、これはなんか言いづらい…。

「彼氏できたら高校生らしくて楽しそうじゃん!
一緒に帰ったり、デートしたり…」

「あとは?」

「ハグとか、き、キスとか…」

「へぇ~。都はキスに興味あるんだ。」

「興味って!そ、それは…」

興味はある!!

「ふつうだよ…。」

力なくそう言うと、匡はニヤリと笑った。

「もし今年中に彼氏できなかったら、
俺が教えてやろうか。」

「えっ!!?」

「デートも、ハグも、キスも、」

匡がメガネをはずして私の耳元に近づき、呟いた。

「その先も…」


私の心臓はドキドキとかつてないスピードで
鳴り始める。


「匡…私」ガラガラッ!


扉の開く音に驚き、私たちは慌てて距離を離した。

音のした方向には待ち人・長崎くん。


「わっ、ご、ごめん!
お邪魔…しました…!」

長崎くんが赤い顔で立ち去ろうとしたので、
慌てて追いかけた。