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「えへへっ」
「なに、急に。」
突然笑いだした私を見て、麗香は気持ち悪いと言いたげな視線を向けた。
「卒業式のこと、思い出してたの。」
「なによ、そんな前のこと。」
「つい3か月前だよ?」
麗香は照れ臭そうに私から顔を背けた。
その姿にまた笑みがこぼれる。
「あの時、麗香が励ましてくれなかったら
高校で友達なんて作れなかった。」
「関係ないわよ。」
「え?」
麗香は真面目な顔で私に言った。
「都には友達できるわ。
だって優しいもの。」
「……。」
「中学でも、みんな落ち込む都になんて声をかければいいかわからなかっただけよ。」
「そう…だったんだ。」
「当たり前でしょ。」
「…うんっ。
間下への告白は失敗しちゃったけど、
友達なくした訳じゃなくてよかった。」
麗香は優しく笑いかけた。
「まっ、私は失敗だなんて思ってないけどね。」
「え?」
「だってそうでしょ?
もし友達のまま卒業式に間下に告白したとして、
もし付き合ってたらって思うと、
早くに疎遠になって大成功だったと思うわ。」
「大成功…」
麗香は勝ち誇ったようにVサインを私に向かって
掲げた。
その姿に思わず私は笑ってしまう。
「そうだといいな。」
「そうよ。
都はもっといい人に出会うべきよ。」
「うんっ!」
私も麗香に向かってVサインを向けた。
絶望のどん底から毎日一歩ずつ這い出せている。
麗香のお陰で。
私の力で。
そして、トラウマを乗り越えて、
高校こそは最高の彼氏作ってやるんだから!
私は改めて心に誓い直した。



