中学3年生の時のことだ。
私には好きな人がいたーー
***
「おっはよ~都!」
「都、昨日の動画見た?」
「おはよう!見た見た~」
「やっぱ受験勉強してなかったか~」
「今日はするし!」
「嘘だ~!」
自慢じゃないけど、私は昔から友達が多い。
大人数での会話では、うまく空気を察して
場をまとめられたし、
一対一の会話では、相手の好きな話題を掘り下げるのが得意だった。
得意だったし、好きだった。
いろんな人と話して、仲良くなると楽しかった。
「近衛、宿題見して」
「え~」
「近衛の宿題見たら成績下がるぞ。」
「それが人にものを頼む態度か!!」
仲良くなるのは女子だけじゃなく男子も。
女子の友達は男子はうるさくてうざいとかってよく言ってるけど…
からかってはくるけど、なんかおもしろいし。
異性を遠ざけるのは思春期ってやつ…?
そしたら、私小学生から成長してない!?
一人で苦笑いを浮かべながら、自分の席に座った。
でも、こんな子供っぽい私にも好きな人がいた。
「おはよう、近衛」
「あっ、おはよう!間下。」
隣の席の男の子。
間下 智樹くん。
間下は明るい人で、クラスの中でも中心的存在。
委員会やら何やらで、一緒に話す機会が多くて、いつの間にか好きになっていた。
「アハハ…宿題見せて~って言うから
見せようと思ったら、
竹田が私の宿題見たら成績下がるぞ、
なんて言うんだよ!?」
「ひどっ!
まぁでもたしかに、近衛の宿題は俺もいらね。」
「おいっ!」
私が間下を軽く小突くと、
少年のような笑顔を浮かべた。
かわいい…
私は間下が好きだ。
こんな冗談言い合う関係でも、
間下と仲良くしていたい。
それで…それで卒業式には…
勇気を出して告白したい。
私は日に日に迫る卒業式に向け、
少しずつ決意を固めていた。



