「あっ、いたいた。匡~!」


人混みの中、つまんなそうにスマホを見ていた匡が、声に反応して顔を上げた。


「おはよう!今日はよろしくね。」
「おはよう、谷くん。」

「おはよ。」


今日は土曜日。

私と麗香と匡は、にぎわう繁華街に来ている。


目的は、私の彼氏を作るための第一歩。

男子の意見を参考に、モテるための服を買いにきたのだ。


「早速いこっか。」

匡に笑いかけると、「そうだな」と穏やかな笑顔を返してくれた。


「男子は、どういうタイプが好きなのかな?
清楚系とか、大人っぽいのとか?」

道すがら素直な疑問をぶつけてみる。

「さぁ。人によるだろ。」

「じゃあ匡の意見でいいよ!」

そう言うと、なぜか匡は満足そうに笑った。

「??」

「そうだな。
ピシッとしてる服装かな。
だぼだぼしてるんじゃなくて、しまってるの」

「ほぉ…大人っぽい感じかな。」

「色は白とか。」

「なるほど!」


近くに知ったブランドの店があり、
とりあえず入ってみる。


「これとかどう?」

「試着してみろよ。」

「うん!」


匡の言葉に合う服を試着してみる。


「どうかな?」

「うん、似合ってる。」

「っ…/////」


まっすぐそんなことを言われると照れる…

コミュ力高いんだか、低いんだか。


「都。白ワンピもあったよ。」

「うん、ありがと麗香。これも着てみる。」

「この服後ろに紐あるし、手伝うわ。」


そう言って、試着室に二人で入った。


「アハハ…思った以上に照れるね。
ファッションショー。」

「都、あんたまんまと谷くんに乗せられてるわよ。」

「へ?どういうこと?」

「谷くんの好みの服着させられて、
彼を喜ばせてるだけじゃない。」

「なんで匡が私を見て喜ぶの?」

「…。」

「ないよ~!
純粋にアドバイスくれてるだけだって。
麗香は裏の裏ばっか考えるんだから。」

「裏の裏は表よ。」

「あれ、そっか。アハハッ」


麗香に手伝ってもらって、
ワンピースを着ることができた。

あ、これ…。
結構かわいい。


「まぁいいわ。
余計な口挟まないようにする。
いつも谷くんに協力してる分、思う存分アドバイスもらいなさい。」

「うんっ」


私は笑顔で返事をして、
試着室のカーテンを開けた。