「あんた学ばないわね。」

二人がいなくなると、
ずっと様子を見ていた麗香がそう言い放った。


「名前呼びって普通じゃないのか…?」

「異性でいきなりはあんまないかなぁ。」

私がやんわりと伝える。

「そうなのか…」


がっかりする匡を見て、申し訳ないけど笑いそうになる。


「大げさだよ!それに、麗香に言われた反省をいかして、名前覚えられてたし。」

「昨日の夜叩き込んだ。」

さすがやる気ある人は気合いの入れ方が違う。


「そのくらい当然ね。」

麗香はそう言うと、荷物をもって立ち上がった。

「帰るの?」

「私もこのあと予定があるの。
谷くん、次までに話題の引き出し作って来るくらいしなさい。」

「はいはい。」


麗香は早歩きで教室を出ていった。


「都、よく西園寺とケンカしないでやってるよな。」

「麗香は言い方が悪いだけで優しいんだよ。
なんだかんだ一番匡にアドバイスしてるの麗香じゃん。」

「それはそうだけど…」

「いつかわかるよ。」

そう言って笑いかけると、匡は目をそらして立ち上がった。

「俺たちも帰ろう。」


私も荷物をまとめ、匡のあとについて教室を出た。