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「おはよう。匡。」

「おはよ。」


朝や昼休みはできるだけ、
匡に声をかけるようにした。

匡も話しかければ返してくれる。

そして、私の狙いは…


「なに話してんの~?都」
「谷くんとの組み合わせ最近多いね。」

珍しい『谷くん』との楽しげな様子を見て、
私と麗香以外の人もこの輪に入れる。

匡と話せば、おもしろいってわかって、友達も増えるはずだ。

友達が多い私にできる作戦だ!(どや顔)


「話してみたらおもしろいんだよ、匡」

「へぇ~」

「いや、おもしろくは…」


さっきまでハキハキ麗香とケンカしてたくせに、急に目が泳ぐ。
混乱しているのが一目瞭然。


「谷くんよくスマホ見てるよね。
なに見てるの?ゲーム?」


匡、コミュ力ってこういうことですよ。

話したことなくても、相手に興味を持ってたら、こういうとき引き出しができる。

さすが奈々ちゃん。


「まぁ。ラインとかも…」

「へぇ、中学の友達?」

「そう。」


会話が味気ないなぁ。

匡からも話ふって!

目線でそう伝えると、匡は何かを考えるように数秒黙ると、満を持して口を開いた。


「奈々はどこ中?」



「えっ」
「なっ!!!」


「え!!???」


驚いた私たちにさらに驚く匡。


「あっ、はは…
いきなり名前で呼ばれたからビックリ。
ていうか覚えてくれてたんだね。」

「ごめん、イヤだった?」

「イヤじゃないけど…」


以前、私とも似たような会話してたな。

中学の風習なのか知らないけど、
いきなり名前呼びが変っていうのはあとで言わないと…。


「奈々~!春佳~!
部活遅れるよー!」

そのとき、ちょうどよく教室の外から
奈々ちゃんと春佳が呼ばれ、
二人は慌ててその場を離れていった。