僕はいつも間に、ソファーで寝てしまった。再び目を開けたらもう昼になった。
どうしよう!学校は遅刻だ。携帯をみたら、やっぱり担任からの留守電がはいって入っている。今日は一応仮病を使って休もう。
僕はかすれた声とわざとらしい咳を担任に聞かせた。ケイタイの向こうから担任の心配そうな声が聞こえてきた。
休みを取ったら心が少し落ち着いてきた。今日はゆっくり休める。
いや、違う!今日から少女が僕を連れて違う世界を見せてくれる。
鼻歌を歌いながら顔を洗い、歯を磨き、リビングルームに戻った。
そういえば、昨日みたいな優しいパパとママなら、僕がソファーで寝ているのに、黙って見過ごすはずがない。
二人は今どうなったのだろう、という好奇心に駆られて僕はパパとままの部屋を覗いた。もう誰もいない。昨日のパパとママはどうしてだろう。僕としては今のままがいい。
自分の部屋の前で中の様子を伺おうとして、耳をドアにくっつけた。何も聞こえてこない。まさか、僕が寝坊をしたので少女は僕を置いて出て行ってしまったのでは?
こんなふうに思ったらもうこのままじっとしていられなくなった。僕はこっそりとドアを開けて中を覗いた。少女はまだ僕のベッドで寝ているのをみて、そっとドアを閉めた。ほっとした。
ベランダへ行って外の空気をいっぱい吸った。
なんだか、少しわくわくしてきた。今日からは新しい世界が僕を待っている。しかし、少女は一体どんな存在なんだろう。ふと、おとといの夕方に見た巨大な球体の事を思い出した。そして、たくさんの黒い人影。
一人、思いに沈んでいるとその時、急に人の気配を感じて振り返った。少女そこに立っていた。
「お……起きたの?」
「うん」
少女の大きな目は僕を吸い込もうとしている。多分、最初に見たときから、少女にひかれているんだろう。
「部屋覗いたでしょう」
「ご、ごめん」
「それより腹減った」
「何が食べたい?」
少女は少し考えてから話した。
「昨日食べたギョーザがいい」
「分った。今すぐ準備するから待っててね」
僕は早速、厨房へ行って冷蔵庫から冷凍ギョーザを掴んで、レンジに入れ、温めた。ギョーザを皿に移してリビングルームに行くと、少女はテレビを見ていた。
「どうぞ」
少女は何も言わず皿をもらって食べ始めた。食べ終わるまで、会話はなかった。少女の食べる様子を見ながら、早く僕に僕の知らないことを教えてほしいと心の中でつぶやいた。
僕は空の皿をもって厨房の流し台に持って行き、リビングルームに戻って少女の向かいに坐った。
「昨日の夜、私の言ったとおりにした?」
少女はじっと僕を見つめながら話した。
「……髪の毛の事?」
「そう」
「うん、お冷に入れて、パパとママの部屋に置いた。あれって一体どんな意味があるの?自分でいろいろと考えてみたけど、少しも理解できなかった」
「月の引力は知っている?」
僕は髪の毛の事を聞いたのに、少女はなぜ月の引力の事について話し出したのだろう?疑問に思ったけど、尋ねることはできなかった。
「うん。詳しく知っているわけではないけど、少しだけなら……」
「月の引力は地球上のすべての 物にも影響をあたえる。もちろん人間の身体にも影響を与える」
「そこまでは知らなかった」
少しずつ、興奮の感情が僕の身体に拡散し始めた。そう、これからが違った世界が始まる一歩だ。
少女は話を続けた。
「あの黒い人影、それを黒魂と呼ばれる存在。それも月の引力によって生まれたもの」
「でも、あの巨大な球体……つまりあなたが現れたから、黒魂が人の体から出てきたでしょう。月の引力と関係があるなら普段にも出てきていいはずじゃないの?」
「普段なら絶対出られない」
「なぜ?」
「きっかけがないから」
「じゃ……あなたがきっかけってこと?」
「そう。私が人々の中にある黒魂を引き出すきっかけ」
少女の口調も表情も変化はなかった。
「なら、あなたは一体」
「これから説明する。その前に、水を一杯もらえる?」
「わかった。すぐ持ってくる」
僕は早速厨房へいって、コップに水を注ぎ、少女に渡した。水を一口飲んで少女はまた始めた。
「私はかぐやの分身とも言える存在。引力であの黒魂を人間の体から引き出し食べ、自分を成長させる」
成長が小さくなることと?かぐや姫はなぜ出てきたの?黒魂は何なのか、まだはっきりとわからない。
「黒魂が何なのか、知りたい?」
「知りたい…それにかぐや姫の分身って何のこと?」
少女は水を飲み干してから話し出した。
「黒魂は人間の心の中に生まれた悪の形態。つまり心の中に住んでいる悪魔」
「じゃ、あれを食べるあなたは、いい存在?」
人と呼んでいいかどうかわからなかったので、「存在」という言葉を使った
「いい存在じゃない。黒魂は私の成長にとって必要不可欠の食料。それに、僕があの黒魂を食べたら、人間の心の中から悪がいなくなるとでも思っている?」
「違うの?」
どうしよう!学校は遅刻だ。携帯をみたら、やっぱり担任からの留守電がはいって入っている。今日は一応仮病を使って休もう。
僕はかすれた声とわざとらしい咳を担任に聞かせた。ケイタイの向こうから担任の心配そうな声が聞こえてきた。
休みを取ったら心が少し落ち着いてきた。今日はゆっくり休める。
いや、違う!今日から少女が僕を連れて違う世界を見せてくれる。
鼻歌を歌いながら顔を洗い、歯を磨き、リビングルームに戻った。
そういえば、昨日みたいな優しいパパとママなら、僕がソファーで寝ているのに、黙って見過ごすはずがない。
二人は今どうなったのだろう、という好奇心に駆られて僕はパパとままの部屋を覗いた。もう誰もいない。昨日のパパとママはどうしてだろう。僕としては今のままがいい。
自分の部屋の前で中の様子を伺おうとして、耳をドアにくっつけた。何も聞こえてこない。まさか、僕が寝坊をしたので少女は僕を置いて出て行ってしまったのでは?
こんなふうに思ったらもうこのままじっとしていられなくなった。僕はこっそりとドアを開けて中を覗いた。少女はまだ僕のベッドで寝ているのをみて、そっとドアを閉めた。ほっとした。
ベランダへ行って外の空気をいっぱい吸った。
なんだか、少しわくわくしてきた。今日からは新しい世界が僕を待っている。しかし、少女は一体どんな存在なんだろう。ふと、おとといの夕方に見た巨大な球体の事を思い出した。そして、たくさんの黒い人影。
一人、思いに沈んでいるとその時、急に人の気配を感じて振り返った。少女そこに立っていた。
「お……起きたの?」
「うん」
少女の大きな目は僕を吸い込もうとしている。多分、最初に見たときから、少女にひかれているんだろう。
「部屋覗いたでしょう」
「ご、ごめん」
「それより腹減った」
「何が食べたい?」
少女は少し考えてから話した。
「昨日食べたギョーザがいい」
「分った。今すぐ準備するから待っててね」
僕は早速、厨房へ行って冷蔵庫から冷凍ギョーザを掴んで、レンジに入れ、温めた。ギョーザを皿に移してリビングルームに行くと、少女はテレビを見ていた。
「どうぞ」
少女は何も言わず皿をもらって食べ始めた。食べ終わるまで、会話はなかった。少女の食べる様子を見ながら、早く僕に僕の知らないことを教えてほしいと心の中でつぶやいた。
僕は空の皿をもって厨房の流し台に持って行き、リビングルームに戻って少女の向かいに坐った。
「昨日の夜、私の言ったとおりにした?」
少女はじっと僕を見つめながら話した。
「……髪の毛の事?」
「そう」
「うん、お冷に入れて、パパとママの部屋に置いた。あれって一体どんな意味があるの?自分でいろいろと考えてみたけど、少しも理解できなかった」
「月の引力は知っている?」
僕は髪の毛の事を聞いたのに、少女はなぜ月の引力の事について話し出したのだろう?疑問に思ったけど、尋ねることはできなかった。
「うん。詳しく知っているわけではないけど、少しだけなら……」
「月の引力は地球上のすべての 物にも影響をあたえる。もちろん人間の身体にも影響を与える」
「そこまでは知らなかった」
少しずつ、興奮の感情が僕の身体に拡散し始めた。そう、これからが違った世界が始まる一歩だ。
少女は話を続けた。
「あの黒い人影、それを黒魂と呼ばれる存在。それも月の引力によって生まれたもの」
「でも、あの巨大な球体……つまりあなたが現れたから、黒魂が人の体から出てきたでしょう。月の引力と関係があるなら普段にも出てきていいはずじゃないの?」
「普段なら絶対出られない」
「なぜ?」
「きっかけがないから」
「じゃ……あなたがきっかけってこと?」
「そう。私が人々の中にある黒魂を引き出すきっかけ」
少女の口調も表情も変化はなかった。
「なら、あなたは一体」
「これから説明する。その前に、水を一杯もらえる?」
「わかった。すぐ持ってくる」
僕は早速厨房へいって、コップに水を注ぎ、少女に渡した。水を一口飲んで少女はまた始めた。
「私はかぐやの分身とも言える存在。引力であの黒魂を人間の体から引き出し食べ、自分を成長させる」
成長が小さくなることと?かぐや姫はなぜ出てきたの?黒魂は何なのか、まだはっきりとわからない。
「黒魂が何なのか、知りたい?」
「知りたい…それにかぐや姫の分身って何のこと?」
少女は水を飲み干してから話し出した。
「黒魂は人間の心の中に生まれた悪の形態。つまり心の中に住んでいる悪魔」
「じゃ、あれを食べるあなたは、いい存在?」
人と呼んでいいかどうかわからなかったので、「存在」という言葉を使った
「いい存在じゃない。黒魂は私の成長にとって必要不可欠の食料。それに、僕があの黒魂を食べたら、人間の心の中から悪がいなくなるとでも思っている?」
「違うの?」