ドアがぶっ壊れた音がした。それから髪の槍が飛びついた来た。桃色は跳びあがりながらかわした。その後ろを葉月が飛んできて手に持っていた髪の槍をそのまま桃色の体に突き刺した。桃色は逃げることもできなく、髪の槍に刺された。

「どうして?あなたは死んだはずなのに」

「運転士の死体のおかげで逃げることができた」

「そう、相手を侮るもんじゃないね。ゲームやる時に一番気を付けないといけないことなのに、忘れるなんて」

葉月は桃色の話が終わったのを待ってから黒魂を吸った。

「大丈夫?」

僕の傍に駆け寄った葉月が尋ねた。何か答えようとしたけど、声に出なかった。

葉月は僕を抱いて外にでた。太陽の光が両目を刺す。僕が今まで閉じ込められたのは山の奥にある廃棄工場みたいな場所だった。

近くの日のよく当たる場所で葉月はそっと僕を下ろした。彼女は僕の額に自分の髪を刺した。僕は眠りに入った。

目を開けるとオレンジいろの空が目に入った。黄昏はいつもより速く来た気がした。太陽は自分の光が消えかけているのが悔しくて、最後の抗いをしていたけど、闇にはかなわなかった。

僕の横に坐っている葉月を見て傷の具合を尋ねた。

「傷はもう大丈夫なの?結構ひどかったみたいけど」

「休んだから、もう大丈夫 」

葉月が大丈夫と言っているので、僕はそれ以上聞かないことにした。葉月の髪のおかげなのか、ひと眠りしたら、体はもう元気になった。

僕らは家に戻った。

明日からは葉月たちの戦いが始まる。今日はゆっくり休んで体力をつけたいだけだ。

「晩ご飯はないを食べよう?」

葉月は何も言わずソファーに座ってテレビをつけた。どのチャンネルも全部同じニュースをやっている。最近急増している猟奇殺人事件に対しての報道だ。

軽くご飯を食べて、寝るまで何をしようかと一人で考えてみた。葉月はチャンネルを回しているだけだ。葉月は今何を考えているのだろう。

このまま家の中でテレビを見るには、もったいない平和な時間なので、葉月と一緒に町を歩くことに決めた。夜の街も華やかで面白い。

「出かけてみない?」

「どこ?」

「あちこち。前に葉月が一人でやったように。でも、今日は僕が付いているから、面白いところにもつれてあげる」

「行こう」

今夜はなんか涼しい夜風も吹いていた。

葉月と街に出たのはいいものの、これからどこへ行けばいいか分らなくなった。ふと思い出したのは、今までの僕は殆どお宅のような生活をしていたので、女の子と楽しく遊べる場所なんでひとつも知っていない。

ふとゲームセンターへ一緒に行く恋人を見たのを思いだしたので、そこへ行くことにした。UFOキャッチャーもあるし。

僕は早速、葉月をつれてゲームセンターへ向かった。たくさんあるゲーム機に葉月は興味を示さなかった。でも、UFOキャッチャーのぬいぐるみには目を離せなかった。

ここで、僕は硬貨をいれて、一発でつれるように願った。かっこよく見えるから。しかし、こんな時に限って、運はついていない。そもそも、運がついてきたことは一度もなかったけど。二千円近くはらってやっと、一つをつった。ウサギのぬいぐるみだ。葉月にあげたけど、受け取った彼女の顔は無表情なので、気に入ったかどうかは分らない。

ゲームセンターから出て、僕は葉月をつれて、この街の若者に一番人気の「ハヤリのミチ」に向かった。この一本道の両側に軒を並べている店はみんな若者向けの店ばかりだ。しかし、人込みの中からは、自分はまだ若いと思っているおばさんやおじさんもよく見かける。

この一本道の始まりから終わりまで歩いてみたけど、特に葉月の興味を引くものはみつからなかった。
時計を見たらもう夜の10時になった。

僕と葉月は帰り路についた。

今更だけど、よく考えてみたら、これって世間でよく言うデートではないか。ちょっと照れる思いに浸った。

今はそんな妄想をしている場合ではない。何か話題をみつけて、この沈黙を破らないと。

「前回の葉月の恋人だった人は誰なの?」

葉月はただ前を見た。

「あなたの知らない人」

葉月の答えはぶっきらぼうなので、これ以上聞かないことにした。いいたくない話だろう。

楽しい一日も終わり、葉月は僕の部屋に、僕はソファーで寝た。

誰かに揺すぶられて目を開けた。僕は葉月かと思って目を開けた。手で目をこすりたかったけど、手が動けなかった。

目を開けたらぼんやりと女の子の姿が目に入った。でも、髪がちょっとながい。葉月ではない。

桃色だ。

「フモト、よく寝た?気絶したので、起こしてあげたのよ。これから始まる楽しいことを覚えてもらいたいから、寝ちゃだめよ」

葉月と一緒だったのは夢だったのか。