女性たちは自分を操っている張本人の気持ちも知らずに、自分の身体がどんなに傷だらけになっても、攻撃し続けた。女性たちの頭から足までは全部髪に刺され、動こうにも動けなくなった。

十人の女性は惨めな姿になって、地面に倒れた。

「やれやれ。お嬢ちゃんに少しでもいいから、傷をつけることができるんじゃないかと、期待していたけど。甘くみたようだなあ」

葉月はすぐ運転士に向けて髪の槍を放った。

今度も運転士は避けようとしなかったので、髪の槍は全部身体に命中した。先のように、また人が盾になるのかと思ってはいたが、今回は確かに運転士の身体に突き刺さった。
「まともに髪の槍を食らってみたら、結構痛いよね。でも……この痛さがたまらないんだよ。興奮してしまう」

ハハハっと笑っている運転手の体が変化し始めた。運転士の身体に刺された髪の槍は少しずつ彼の身体に飲み込まれてしまった。

「お嬢ちゃん。ぼうっとしてないで、もっと、、もっとくださいよ。髪の槍を!体がほしがっているんだから!」

運転士はいかれているに違いない。こう話しながら運転手は葉月に向かって走り出した。体に刺さってあったはずに髪が全部消えた。体が全部食べたと言ったほうがいいかもしれない。

葉月は相変わらず髪の槍を放ったが、運転士は自分の体の中に全部吸い込んだ。

自分の髪の槍が運転士になんの傷も与えていない事を知りながらも、葉月は髪を投げ続けた。外れた髪は地面のあちこちに刺された。

「お嬢ちゃんよ。大地を大事にしないといけないよ。だって、大地にいろんなものを埋めて隠せるんだから!」

運転手が葉月に攻め寄ってくると思ったら、急に動きを止めて、ただ髪の槍を身体で受け止めるだけだった。本当に、髪に刺されて受ける痛みを楽しんでいるようだ。

髪の槍が自分の身体を突き刺さる感触を感じながら、口では呻き声を漏らした。たても満足しているような声だ。

「そうそう。こんな感じ。もっともっと僕を刺して。たまらない。このままだと、もれてしまう!」

運転士は地面に崩れた。荒い息遣いをしている。

「はあ。行っちゃった。気持ちいい……」

満足そうな顔をした運転士。彼のズボンを見ると、股の部分が段々膨れ上がり、やがては爆発した。そして、現れたのは、真っ黒でタクシー大の、足が二本はえてあるおたまじゃくしに見える怪物が一匹だった。