入り口ドアのベルがカランと鳴り、涼しげなブルーの麻ジャケットに淡いグリーンの蝶ネクタイ、きちんと折り目がついたベージュのコットンパンツ、そして足元はマロンブラウンのウイングチップという英国風の老紳士が悠然と入ってきた。

「おはようございます。いらっしゃいませ」
「おはよう。いつものブレンドを」
「かしこまりました」

 老紳士はいつものようにカウンター席にゆったりと腰掛けた。コーヒーを待つあいだ、いつものように横を向いて海を眺める。