「これは?」
「サービスです。ところで大変失礼ですが、お客様は本当にこの夏ブレンドを美味しいと感じますか?」
「ああ、うん」
「はっきりおっしゃっていただいて結構ですから。いかがですか」
「それなら、はっきり言おう。昨日までのプレンドの方が美味しいと感じた」

 やっぽりそうだ。そうだと思っていた。その理由もわかる。

「なんだか薄らぼけた味だ、そう思われたのでは?」
「何もそこまで酷い言い方をしなくても」苦笑いを浮かべ、老紳士は、まあ当たっていると認めた。

「では、今度はミルクを入れないで召し上がってみてください」
「うん?ミルクを?」
「そうです。ブラックで一口。騙されたと思って」

 その言い方がおかしかったらしい。老紳士は笑いながらカップを持ち上げ、夏ブレンドを口に含んだ。ワインテイストをするように口の中で転がす。