「塩、コショウ、ソース、マヨネーズ、ドレッシング、もしも和食ならば醤油、七味唐辛子、山椒とか、そんなエトセトラです」
「ああ・・・」
「奥様のお料理に手をつける前に、それらの調味料をお使いになっていらっしゃいませんか?」
「うう、うむ。言われてみれば確かに」
「昨夜のカレーには何の調味料をお使いになりました?」
「ええと、ブラックペッパーと塩と、ソースを少々」
「ソースも!?食べる前にですよ?」
「・・・食べる前に」申しわけなさそうな小さな声の老紳士。どうやらご自分で気がついたらしい。

 そんなにてんこ盛りの調味料をぶっかけてしまったら味が変わってしまう。しかもソースまで。

 ソースはトマトをはじめいくつもの野菜類を原料に、そこに塩と酢、香辛料を加えて作る。そのような最強の調味料を、奥様が丹精込めた手料理に、しかも味見する前にかけてしまったら、奥様でなくても怒るだろう。