「それで、奥様がお作りになったお料理は何でしたか」
「カレーです。欧風の、夏野菜のカレーと言っていたな。ナスとかの今が旬の野菜がたくさん入った」

 そっちかあ。けっこう庶民的なんだ。まるで英国貴族のようなこの方の佇まいからコース料理を連想したのだけど、また予想が外れたよ。でも、まあいい。

「サイドメニューはありましたか。小皿に入ったサラダとか」
「ああ、ええ、サラダがあったな。レタスにトマトにマッシュドポテトに・・・」

 とても美味しそうだ。聞いているだけでよだれが出そう。だがしかし、よだれをこぼしている場合ではない。

「テーブルの上にはお料理以外に何がありましたか?」
「えっ?何って言われても」
「調味料の類はいかがですか?」

 そこで老紳士は、はっと虚をつかれた顔になった。