「昨晩のメニューは何でしたか」
「ああ、そういえばそれはまだお話していなかった。それでも貴女は真相を突き止めたと?」
「ええ。どのようなメニューでも同じ答えに行き着くので」
「ほお。それはまるでベイカー街の住人のセリフのようですね。では、このワトソンに真相を教えてくれたまえ、きみ」

 ベイカー街?ワトソン・・・ああ、わかった。イギリスのコナン・ドイルが産んだ稀代の名探偵のことね。それにしても洒落た言い方をする。思わず笑ってしまった。

「ふふふ。シャーロック・ホームズがお好きなんですね」
「はい。著作は全部読みましたよ。まだ若い頃ですが、ロンドン滞在中にベイカー街へ何度も足を運んだものです。貴女も推理ものがお好きなのかな」

 好きかと聞かれたら、どうなんだろうと思う。小説は読む。でも推理小説が特に好きというものでもない。だから、ええまあと曖昧な返事をした。