嫌なことが待っていても日々は先へ先へと進んでいってしまうもの。令嬢であるグレイスがすることなどほとんどなかったが準備も済んだらしく、誕生日パーティーは明日に迫っていた。
グレイスの憂鬱は晴れるどころか加速するばかりだった。もう逃げ出してしまいたい、と思う。そんなことをしたら生きていけなくなるので実行するつもりなどはないけれど。
それにフレンにも逢えなくなってしまう……なんて、ここでもまだ彼のことを考えてしまう自分に呆れるやらのグレイスだった。
あれから結局、グレイスは日が暮れるまで庭にいた。少し冷える日だったので流石に日の暮れかけた頃に迎えが来た。けれどそれはフレンではなくメイドの一人であった。
てっきりフレンが迎えに来てくれると思っていたグレイスは、悲しい気持ちになってしまったものだ。自分から逃げ出したようなものなのに、迎えに来てくれないのが不満だなんて我儘な、とも思った。
でもそのことで、グレイスが「ちょっと風にあたりたくて」と言い訳をメイドにしたことで、グレイスがフレンとの打ち合わせのさなかに飛び出していったことはおおやけになっていないようだった。知っているのはフレンばかりだが、フレンがグレイスを知っているのと同じだけ、グレイスだってフレンのことを知っている。
このこと。父に報告などしていないに決まっていた。
あくまでも自分とグレイスの問題であるから。それが『不和を起こした』という程度であれば、自分で解決しようとするひとなのだ。
だからグレイスの、婚約に対するうしろ向きな気持ちを悟っているのは、父と、それからフレンだけなのであった。
グレイスの憂鬱は晴れるどころか加速するばかりだった。もう逃げ出してしまいたい、と思う。そんなことをしたら生きていけなくなるので実行するつもりなどはないけれど。
それにフレンにも逢えなくなってしまう……なんて、ここでもまだ彼のことを考えてしまう自分に呆れるやらのグレイスだった。
あれから結局、グレイスは日が暮れるまで庭にいた。少し冷える日だったので流石に日の暮れかけた頃に迎えが来た。けれどそれはフレンではなくメイドの一人であった。
てっきりフレンが迎えに来てくれると思っていたグレイスは、悲しい気持ちになってしまったものだ。自分から逃げ出したようなものなのに、迎えに来てくれないのが不満だなんて我儘な、とも思った。
でもそのことで、グレイスが「ちょっと風にあたりたくて」と言い訳をメイドにしたことで、グレイスがフレンとの打ち合わせのさなかに飛び出していったことはおおやけになっていないようだった。知っているのはフレンばかりだが、フレンがグレイスを知っているのと同じだけ、グレイスだってフレンのことを知っている。
このこと。父に報告などしていないに決まっていた。
あくまでも自分とグレイスの問題であるから。それが『不和を起こした』という程度であれば、自分で解決しようとするひとなのだ。
だからグレイスの、婚約に対するうしろ向きな気持ちを悟っているのは、父と、それからフレンだけなのであった。