あれからきっちり四半刻(30分)後……2人は、恋幸の聖地(モチダ珈琲店)にて落ち合っていた。
 自身の手元に目線を落としたままもじもじする恋幸の返答を聞き、裕一郎はわずかに首を傾げる。


「……? 恥ずかしい? なぜですか?」
「だって、その……倉本様は声もかっこいいから……」
「……」


 何も言い返されなかったことから「もしかして、気を悪くさせてしまったのかな?」と不安を抱きつつ顔を上げた恋幸の目に映ったのは、整った眉を八の字にして片手で口元を隠す裕一郎の姿だった。