「読んだけど、この……204ページ目。『彼の(つや)やかな唇が雪音の手首に何度も口づけを繰り返し、雪音はただ甘い声を漏らすことしかできなかった。そんな姿に和臣は(たかぶ)りを覚え彼女の名を呼ぶが、それはまるで心の奥まで欲するかのような熱を(はら)んでおり』……この辺り。なんで急にティーンズラブ調になってるの?」
「気分がノっちゃって、つい……」
「あー、うん……166ページ目から突然作風変わってるから『あー、良い事あったんだろうなぁ』って、それくらいはわかるよ。けど、読者は今までのお話の続きを読みたいんだから、一つの長編の中で気分で作風を変えられたら読者は混乱するでしょ?」


 清水さんのダメ出しは的確で、恋幸はただ赤べこのように頷くことしかできない。