閨事(ねやごと)、まぐわい。その言葉の意味を、裕一郎は冷静に推測した。

 自分の知識と、恋幸が“そう”発言した意図の間に齟齬(そご)が生まれていなければ、それらはつまり『性行為』を意味している。
 そして、要約すれば「貴方と性行為に(およ)ぶ夢を見て避けていました」と暴露されている事になってしまうわけだが、いくら彼女が(表情など含めて)素直な人間といえど、まさかそこまで直球に言葉をぶつけたりしないだろう……と考えた裕一郎の目に映ったのは、沈みかけた太陽を思わせる赤色で頬を染める恋幸の姿だった。

 どこまでも嘘がつけない彼女を見て裕一郎は心の中で「ああ、なるほど」と頷き、つい口から出そうになった笑いをぐっと噛み殺して平静を装う。


「……」