「――!!」


 歪む視界に映ったのは恋幸が待ち焦がれた『彼』の姿で、


「……お疲れ様です。どうやら待たせてしまったようですね、すみません」


 すぐに彼女の姿を見つけ真っ直ぐ席へやって来た彼を見て、ときめきが一周し思わず息を呑む。

 そんな恋幸の様子に彼は腰を下ろしかけた状態のまま首を傾げ「どうかしましたか?」と声をかけるが、恋幸は大げさなほど両手を顔の前で振り、ぱくぱくと唇の開閉を繰り返した。