「あの! 待ってください!」
「……? どうかしましたか?」
「そ、その……しりとり! しませんか!?」
「今からですか? しませんよ」
「えへ、ですよね! すみません……」


 恋幸が咄嗟(とっさ)に口から落としてしまった意味不明な提案は、当たり前ではあるがあっさり断られてしまう。
 はじめは羞恥心を笑って誤魔化した彼女だったが、すぐに「いえ、そうではなくて」と頭を左右に振ってから上半身を(ひね)って裕一郎の方を向いた。


「き、聞きたいことが、あるんです。だから……まだ、寝ないでほしくて……その、10分間だけ、倉本様の時間をください」
「……たった10分で良いんですか? 私という一個人の持つ『時間』は、いつでも小日向さんだけのものでしかないつもりなのですが」
(ほ〜っ!?)


 少女漫画さながらのセリフを浴びせられ、恋幸はときめく一方である。