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あれから恋幸の脳みそを延々と支配しているのは「昨夜、記憶の無い間に重大な失言もしくは悪行を働いてしまい、裕一郎に嫌われてしまったのではないか?」という大きな不安感で、執筆作業も手につかず、昼にウサギの花へご飯をあげてからひたすら床の間で畳の上を転がっている間に時は過ぎていく。
彼は「特に何もなかった」と言ってくれたが、それもこちらを傷つけないために言ってくれたのではないだろうか? と、そんな風に疑ってしまう自分自身も嫌になって恋幸は涙が出そうだった。
(明日になったら出ていけ、って言われたらどうしよう……)
裕一郎を信じているのに、悪い想像ばかりがぷかりと浮かびあがり心を侵食してしまう。