少女漫画脳の恋幸は、もしかしてこのまま裏庭へ連れて行かれた後に「あんた、まさか裕一郎様の彼女? 自分の顔、鏡で見たことないの? 立場を(わきま)えな! あんたがいるとこの家の空気が不味くなるんだよ……っ! さっさと出て行ってちょうだい、このおブスなメロンソーダ小娘っ!!」と、壁ドンと共に罵声を浴びせられ敷地内から追い出されてしまうのだろうかと思い、小さく震えながら星川の後ろをついて歩いていたのだが、辿り着いた場所は畳が良い香りを漂わせる(とこ)()だった。

 ガラス越しに見えるのは、庭の大きな池。部屋の中心には座卓と座布団が置かれ、(ふすま)を開けたすぐ向こう側にキッチンがあることから、普段は裕一郎がここで食事を済ませているのではないだろうかと恋幸は考える。