恋幸は弾かれたように裕一郎の顔を見上げるが、ショーウィンドウを眺める彼の表情は『無』そのもので、彼女は小さなパニックに襲われる。


(え? あれ? 今、)


 ――……なにか、とてつもない爆弾発言を聞いた気がするのですが。
 自身を仰ぎ見る恋幸に気づいた裕一郎は特に慌てた様子もなく「なにか?」と首を傾げるのみで、彼女は“アレ”が現実だったのかどうかすらわからなくなった。

 もしかすると幻聴だったのではないだろうか? などと考え始めた時、鼓膜を揺らした裕一郎の低い声がいとも簡単に恋幸の思考回路を止めてしまう。