彼は少し体を屈めて恋幸の瞳を覗き込むと、ほんの少しだけ表情を(やわ)らげ落ち着いた低音で囁いた。


「……ささやかではありますが……いつも、素敵な作品を読ませて頂いているお礼です。ここは大人しく、“ファン”の厚意(こうい)に甘えてくれませんか? 日向ぼっこ先生」
(……ずるい)


 そんな風に言われてしまったら、恋幸が断れるはずもない。
 静かに頷いた彼女の頭をぽんと撫でてレジに向かう裕一郎。彼の後ろ姿を見送りつつ、恋幸は頬の熱を冷ますためにお冷をぐいと飲み込んだ。