そんな2つの考えを行ったり来たりしながら、恋幸は眉を八の字にしたまま運転席の裕一郎へ目線をやった。


「……どうかしましたか?」


 肌を刺す視線に気がついたらしい彼が進行方向を見据えたままそう問いかけるものの、恋幸は「なんでもありません」とかぶりを振って同じように前を向く。

 再び車内に訪れた静寂に若干の焦りを覚えこそすれど、彼女は裕一郎との間に流れる“それ”を苦痛に感じたことはなかった。


(……そういえば、裕一郎様……車の運転、すごく丁寧で上手だなぁ……)


 ちらり。