「好き」の2文字は、この世にあるどんな2文字よりも伝えにくい。かっこ、私調べ。
 この17年間という長い時間を共有したこの幼馴染に、今更告白をするという勇気が出ないまま、ずるずる。私はこの初恋を長きに渡り引きずり続けている。

「俺、飲み物取ってくるわ」

 彼の部屋で二人、少し前に上映された映画を観ていると、彼はそう言って徐に立ち上がり部屋を出ていった。
 部屋で二人きりというのは、最早慣れすぎている。彼も意識している素振りなどない。だからこそ、私だけが浮かれているのもなんだか気に入らない。
 彼の飼い猫が、ふらりと部屋に入ってきた。この猫も、私に対して警戒心を抱いている様子はない。多分、「またコイツか」と思われている。

「ねぇ」

 引っ掻かれないように声をかけて、猫を膝に乗せる。

「君がアイツに伝えてきてよ、好きだって」

 私がそう言うと、猫はぴょんっと膝の上から飛び降りて、部屋を出て行った。猫というのは自由な生き物だ。元から期待などしていない。いや、期待していたら痛いヤツだから、確実に。

 そんなことを考えていると、彼が帰ってきた。

「おかえりー」

 テレビに視線を向けたままそう声をかけたけれど、彼から返事はない。気になって、彼の方に視線を移す。

 視線の先には、顔を真っ赤にした幼馴染の姿があった。立ち尽くす彼の足元を、猫がゆらりと通り抜けて、私の足元で丸まった。

「...は?」



End.